スランプを解析する

今月、大谷翔平選手のスランプが報道されました。

「11試合、本塁打がない。111打席でわずか1本塁打と打撃不振!!」

そんな見出しが並びました。

 

【スランプには3種類ある】

スランプ!!これはもう前に進もうとする人にとっては、誰にでも何の前触れもなくやってくる来訪者です。

人生でも仕事でもそして趣味であっても、今まで出来ていたことが、ふと気付くと「うまくいかない」もしくは「出来ないようになっている」と感じることが多くあります。

私自身、学生時代に取り組んだ柔道や経営の経験で、数々のスランプと向き合ってきました。

その結果、スランプには3種類あると考えています。

 

【自分のズレが原因のスランプ(修正型)】

これは「自分でも気づかないうちに、基本が少しずつズレていくこと」で起こるスランプです。

この「わずかなズレ」が積み重なると、気づいた時には大きな不調となって現れます。

柔道でこのタイプのスランプに陥ったとき、私を救ってくれたのは「基本に戻ること」でした。

しかし自分一人で、どこがどうズレているのかに気づくのは至難の業です。

当時は、練習に使えるビデオカメラも、もちろんスマホもなく、頼りになるのは毎日練習を見てくれる監督やコーチの記憶だけ。

たとえば私と同じサウスポーの松本コーチからは、こんな指摘を受けました。

「最近、技の入り方が崩れている」「引手をもっと高く引け」「組手が下がりすぎている」「気持ちが前に出すぎて技が雑になっている」

技をかける前の間合い、タイミング、引手の位置、心持ち。

コーチのアドバイスを受けながら、それらを一つひとつ直していくと、不思議と自分を取り戻す瞬間が訪れます。

つまり、「原点に戻る=ズレを修正する作業」なのです。

 

このスランプを抜け出す最短ルートのひとつは、「調子が良い時の自分をよく知っている人の視点を借りること」です。  

自分のズレには、自分ではなかなか気づけません。だからコーチのような外部の目が必要なのです。

この経験は、経営者となった今も生きています。

スランプに陥った社員本人が、その原因を自分で見つけるのは難しい。

ですから十分とは言えませんが、社員の表情の変化、声のトーン、立ち姿、所作、判断のスピードなどに目を配り、適切なタイミングで声をかけるようにしています。

経営者自身も、わずかな判断のズレ・姿勢のズレ・習慣のズレが積み重なると、このタイプのスランプに陥ります。

しかしながら年を重ね、立場が上るほど、柔道のコーチのように「ここが以前とはズレてきてるよ」と指摘してくれる存在は減っていきます。

そんな時に有効なのが、次に紹介する「うまくいっている人を真似る」 という方法です。

 

【成長痛が原因のスランプ(拡張型)】

これは「今の自分では届かないから苦しい」タイプのスランプです。

基本に戻るだけでは足りず、次のステージに進むための器の拡張が必要になります。

このタイプのスランプに有効なのが、「うまくいっている人を真似る」 という方法です。

真似ることは、自分のズレを照らす鏡になります。

うまくいっている人の話し方、態度、声のトーン、お客様との接し方、服装、時間の使い方、立案(閃き)、資料作りなど注意深く観察してみることです。

すると、自分との相違点や、以前は出来ていたのに今は出来ていないこと、新しい視点などが自然と浮かび上がってきます。

大切なのは一気に変えようとしないことです。「小さな一歩から真似る」 ことです。

一足飛びに変わろうとせず、小さな真似をコツコツ積み重ねることで、いつの間にか目に見えて変化しています。

たとえば私は、経営でスランプに陥った時「私の師である左右田社長>>ならどうするだろう?」とよく考えます。

10代20代の頃は、左右田社長の服装、所作、よく使われる言葉など、本当に小さい所から真似ていきました。

人間の脳には「ミラーニューロン」という仕組みがあるそうです。

これは、人の行動を模倣すると、その人の思考や感性まで取り込むという働きです。

実際、左右田社長の真似を積み重ねることで、無意識の中で社長の感性に近づいたような感覚が生まれ、新たなアイディアが湧き、スランプを乗り越える力になってきました。

余談ですが、左右田社長からは「丸竹」ではなく、よく「マネ竹」とお言葉を頂いて、からかわれました。

 

【外部環境の変化が原因のスランプ(環境適応型)】

これは自分ではどうにもならない外部要因が原因のスランプです。

「環境が変わったから自分も変わらざるを得ない」タイプのスランプで、戦略の再構築・価値観の刷新などが必要でしょう。

近年、多くの経営者の方々が悩まれているのが、この「外部環境の変化が原因のスランプ」なのではないでしょうか?

 

私自身もここ数年、コロナ禍やトランプ政権下での急激な経営環境の変化、さらに技術革新による商品ニーズの変化などもあり、このタイプの苦しいスランプを経験しました。

このスランプを脱するには、環境変化に適応するしかありません。

そのためには、痛みを伴う「見直し」や「手放すこと」が必要でした。

2023年春頃から始めた「第3の創業」とも言える経営および組織改革ですが(関連ブログ:■再スタートの春>> ■第三の創業>> ■訃報と中間報告>>)、おかげさまで改革を機にしっかりと結果が出始めています。

しかしながら、近年の経営環境の変化は、もはや「変化」という言葉では追いつかないほどの速さです。

ホルムズ海峡封鎖による物流・原材料・為替の変動、AIの普及速度、消費者の価値観の移り変わりの速さ、そして新しい競合は同業他社ではなく異業種から突然現れる時代になりました。

こうした激変の時代においては、スランプを「不調」だと捉えるのではなく、次のステージへ進むための「転換点」として前向きに受け止めることが大切だと感じています。

あえて陽気に、この激動の時代を共に乗り越えていきましょう。