資源有効利用促進法(資源法)が2026年4月に改正される予定です。
国が再生材利用を義務付けた製品(特定製品)については、これまでは努力義務・推奨レベルにとどまっていた再生材の利用が「義務」になります。
そしてその製品のメーカーには、「再生材の年間利用量や利用率」などの計画の提出(中長期計画)や定期報告(実績報告)が義務化される予定のようです。
これは これまでに無かった新制度 です。
特定製品を製造する企業は2026年以降、再生材を使わないと法律違反になります。
詳しくはこちら
https://www.env.go.jp/content/000342215.pdf
【プラスチックが特定製品に指定】
4月の改正では、従来の10業種・69品目に加え、新たな製品カテゴリが追加されるようで、候補として挙がっているのが、プラスチック使用製品(容器包装、家電筐体)のようです。
プラスチックについては、日本はアメリカに次いで世界第2位の年間廃棄量です。
しかし、今までプラスチックごみを資源として引き取ってくれていた中国・マレーシア・タイ・ベトナムなどへも国際的な規制が強化された為、輸出できなくなりました。
そのため日本国内では処理施設がパンク、一部自治体で廃プラが滞留し、廃プラの行き場が無い状態です。
これが政府の危機感を高め、再生材利用を義務化しなければ日本は回らないと、今回の判断に至ったのだと思います。
なお、燃やしてエネルギーとして使う方法は国際的にはリサイクルとして認められておらず、最近では「リサイクル」ではなく「リカバリー(回収)」と呼ばれ区別されるようになってきています。
【繊維製品は特定製品に指定されるのか】
残念ながら4月の改正では、繊維類は特定製品に指定されないようです。
しかしEUでは「2030年までにEU域内で販売される繊維製品を、耐久性があり、リサイクル可能で、リサイクル済み繊維を大幅に使用し、危険な物質を含まず、労働者の権利などの社会権や環境に配慮しものにする」との目標を掲げています。
また、製品ごとに再生材使用率の最低基準を設定する方針です。
今回の日本の資源法改正の中で、繊維製品については議論の対象に「正式に」含まれています。そのことを踏まえると段階的にだと思いますが、日本もEUの動きに追随し、そう遠くない未来に、繊維製品も特定製品に指定されるはずだと私は考えています。
【現状の繊維リサイクル】
当社では2022年には反毛の最新設備を導入し、繊維to繊維の量産を可能にしました。(詳しくはこちら>>)
ありがたいことに、大手アパレルメーカー様からも反毛についてお問い合わせをいただく機会が増えました。ただ、当社のような小規模工場では、大手様が求められるロットや価格帯にお応えすることが難しく、結果として双方にとって採算の合わない形になってしまうことがあります。
実際のところ、ご依頼にお応えできないことの方が多いです。
現在、当社が安定して利益を確保できているのは、特殊繊維などの付加価値の高い素材を反毛する仕事が中心です。
原料そのものが高価なため、バージン100%で製品を作るよりも、再生材を含めるほうが品質を保ちながらもコストを抑えられるのです。
そのため、特殊繊維の分野では、再生材を活用することが企業にとっても合理的な選択肢になりやすいのです。
逆に、一般的な量産品の反毛では、どうしても採算が合わず、小規模工場としては無理のある体制になってしまうのが現状です。
通常、再生繊維(リサイクル繊維)を使った製品は、どうしてもバージン繊維を使った製品より高くなってしまいます。
そして今の日本では、残念ながら「再生材よりも新品の素材のほうが価値が高い」と受け取られる文化がまだ根強く、環境に配慮した素材が十分に評価されているとは言えません。
「再生繊維なのに高い」という認識ではなく「再生繊維だからバージンより高い」「環境に配慮した素材には、それだけの手間と価値がある」「環境負荷を減らすための正当なコスト」という理解が消費者に広がっていくことが大切だと思います。
とはいえ、こうした価値観は市場任せではなかなか浸透しません。
だからこそ、まずは国が災害用毛布などの公共調達で率先して再生材を採用し、「環境のために再生材を選ぶことが当たり前」という文化をつくっていく必要があると思います。
【官公庁の災害用毛布の現状】
当社では使用済み災害用毛布をクリーニングし、再度真空パックして備蓄に戻す体制や(詳しくはこちら>>)、端材や未使用の保管期限済みの回収された毛布を反毛し、再生材として活用する技術をすでに確立しています。
2022年には、再生材を使用した災害用毛布の商品化も実現させました。(詳しくはこちら>>)
現在、グリーン購入法(環境配慮調達法)には、災害用毛布における再生材の使用割合を示す項目が設けられています。
しかし、これはあくまで「努力義務」であり、資源法のような強制力のある「義務」ではありません。
そのため、実際の調達現場ではどうしても価格が重視され、結果として選ばれるのはコストパフォーマンスの良いバージン素材の毛布です。
技術的にも体制的にも再生資源を活用できる環境は整っているにもかかわらず、コスト面のハードルや、従来の慣例にとらわれた調達の仕組みが残っていることで、リサイクルの取り組みが十分に進んでいないのが現状です。
【安定した需要が生まれないと、日本の反毛業界は消えてしまう】
反毛業界は今、深刻な高齢化が進んでいます。
長年この仕事を支えてきた職人さんたちが次々と引退し、「この先も続けよう」と思えるだけの安定した需要がないため、後継者が育たない状況が続いています。
実は過去に、ペットボトルから災害用毛布を製造していた事業者もありました。
技術も志も素晴らしい会社でしたが、当時は今よりも社会の環境意識が低かったため需要が低く、残念ながら事業を続けることができずに廃業してしまいました。
「需要がなければ、どれほど良い技術も続けられない」という現実を、私たちはすでに目の当たりにしています。
「本当は職人さんを雇いたい。でも、ひと月分の仕事が安定してないから、雇っても職人さんを遊ばせてしまう。そんな状況では、とても雇えないんです。だから結局、身内で回せる範囲の仕事しか受けられないんです」
そんな声を、同業者からよく耳にします。
需要が不安定なままでは、設備投資も人材育成も進まず、結果として「やめていく事業者」が増えてしまいます。
もしこのまま時間だけが過ぎてしまえば、いざ資源法で繊維が特定品に指定されたとしても、その時にはすでに日本国内には反毛業者がほとんど残っていない──という状況になることも考えられます。
だからこそ、まずは体制の整っている災害用毛布から、すみやかに特定品として指定していただきたいです。
災害用毛布は回収ルートも明確で、再生技術も確立しており、すぐにでも循環を始められる数少ない分野です。
それにもかかわらず、未使用のまま保管期限を迎えた数万枚の毛布に、数千万円の廃棄予算が付けられて、焼却されているのが現状です。(例:大阪府6万枚の廃棄予算額4,600万円)
ここで安定した需要が生まれれば、反毛業界全体の基盤が守られ、次の世代が「この仕事を続けたい」と思える環境が整います。
そしてそれが、将来の繊維リサイクルの土台にもなっていくはずです。
【コストの問題】
一般的な量産品の場合、バージン原料を使って製品を作るほうが安くなるのが現状です。
バージン原料は世界中で大量生産されており、供給も安定しているため、大規模な生産ラインで効率よく加工することができます。
一方、反毛は選別や異物除去などの工程が多く、小ロットで丁寧に作業する必要があるため、どうしてもコストが上がってしまいます。
再生材製品のコストが高いのは、まだ市場規模が小さく、安定した需要が生まれていないことも大きな要因です。
産業というのは、需要 → 設備投資 → 人材育成 → 供給力の向上という順番でしか育ちません。
需要が不安定なままでは、反毛工場側も設備投資や人材育成に踏み切れず、供給力を維持・拡大することが難しくなってしまいます。つまり、需要が安定しないから供給側が育たず、供給側が育たないから価格も下がらない、そんな悪循環が続いているのが現状です。
【政策で伸びる反毛業界】
反毛によるリサイクルは、バージン製品の製造よりも圧倒的にCO2排出量を削減できます。さらに化学繊維は石油由来のため、焼却すると大量のCO2が発生します。
そのためEUでは、「未使用繊維製品の廃棄をやめる」ことも提言されています。
日本もいずれこの流れに追随する可能性が高く、その時には反毛はサプライチェーンに欠かせないものとなるはずです。
現在、ホルムズ海峡の緊張によって原油価格が上昇しています。
石油を原料とするバージン繊維の価格も確実に上がるため、再生繊維との価格差が縮まる可能性があります。
戦争が早期に終結し、原油価格が下落する可能性もありますが、一方で現在の円安は長期化しやすい構造を持っています。
そのため、円安が進む場合もバージン繊維の価格は上がりやすく、結果として再生繊維との価格差が縮まる可能性があります。
時代とともに多くの製品が値上がりしている一方で、繊維製品はグローバル化による過剰生産・過剰消費の影響で、長く低価格が続いてきました。
EUはこの「安すぎる衣料品の構造」から脱却することも目標に掲げています。
バージン製品の価格が適正化されれば、再生材製品との価格差も自然と縮まっていきます。
また、EUが再生材の利用を強力に進めている理由の一つは、中国やアメリカへの資源依存を減らし、域内で資源を循環させたいという考えがあるためだそうです。
域内で資源を循環させれば、経済も雇用もEU内に残ります。
これは環境政策であると同時に、経済安全保障の視点でもあります。
日本も同じ構造を抱えており、今後は国内で資源を循環させる方向へ進む可能性が高まるのではないでしょうか?
そうなれば、反毛業者は日本のサプライチェーンで重要な役割を担うようになります。
反毛は、一つの工場だけで完結できる仕事ではないです。
工場ごとに原料の集まり方や偏りも激しいです。製品の用途も、得意不得意の繊維も、地域の事情も、それぞれ違います。
だからこそ、情報を共有し合い、知恵や経験を持ち寄り、足りないところを補い合あえば、できることは広がっていくはずです。
「一人で見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる」という言葉があります。
実は最近、そんな思いから、これまでお付き合いのなかった反毛関連の事業者さん達にも思い切って電話をかけ、訪ねて経営者の方々とお話をしたり、工場を見せていただいたりしています。業界の現状を聞いて回る中で、同じような課題を抱えていることを改めて実感しています。
【政府へ望むこと】
以前当社のHPを見て、突然、内閣府からご連絡をいただいたことがありました。(関連ブログ:内閣府からのメール>>)
たとえ田舎からでも発信し続けていれば、思いがけない所にまで届くのだなぁと感動した記憶があります。
ですから、いつか遠くに届くことを期待してここに発信します。
政府にまずお願いしたいのは、公共調達において再生材を積極的に採用する仕組みを整えていただきたいということです。
国や自治体が率先して再生材を使うようになれば、市場全体が動き、価格の安定や業界の持続性につながります。
あわせて、未使用の繊維製品を安易に廃棄しないための制度づくりも欠かせません。
循環をすぐにでも始められる分野から、優先的に特定品として位置づけていただきたいと考えています。
もし将来、資源法で繊維が特定品に指定されたとしても、その時には国内の反毛業者がほとんど残っていない──
そんな状況だけは避けたいのです。
今、動いていただくことで、反毛という技術と産業を次の世代につなぐことができます。
どうぞよろしくお願いいたします。






