さんずの川は渡らない!

おかげさまで25年度の税務申告、決算発表を先月末に無事済ませ、一つの区切りを終えたところで、経営者として初心に返る意味も含めて、松下幸之助翁の著書に書かれてあった 大阪商人の「さんずの川は渡らない」という心得に言及してみようと思う。

いろいろな解釈があると思うが、ここから先はあくまでも私の解釈としてお許し頂きたい。

 

まず「さんず」とは、冥途にある三途の川のことではなく、「役つかず」「判つかず」「金貸さず」の3つの事である。

 

①    「役つかず」

中小企業経営者は、たとえ経営が軌道に乗り始め少しばかり余裕が出来たからといっても、事業に関係のない会合の役職に就いてはイケない。

事業外の役職に就けば、そちらの方に時間を取られ、経営者としての時間がおろそかになる。

事業外の事にまで、心を砕いたり、責任を持ったりせねばならず、肝心の自社の事業に専念出来なくなる。

 

②    「判つかず」

これはずばり「保証人にはなるな!」ということである。

他社や個人の保証人を安易に引き受けてしまえば、連帯してその債務を等しく負うことになる。

たとえば自社の経営が順調であっても、不幸にも倒産するような会社の債務を保証してしまえば、万事休すである。

 

③    「金貸さず」

余程のことが無い限り、貸借関係は持つものではない。

但し、生命に係る「命銭」という事態もあるにはあるので、ともに命を掛ける覚悟のある関係ならば別である。しかし金を貸す場合は、返って来なくても良いと思える額までにするべきである。

 

自分は借りても、人には貸さないとは、いかにも大阪商人らしい心得であるが、大阪商人の気質として、そうは言っても価値があれば金を払い、付き合いを大切にしているから、役職を頼まれれば断れずにハリキってしまう・・・。そんなお調子者の大阪人であるからこその、この戒めであろう。

 

ところで私にとって、大阪商人と並んで、忘れてはいけないのが近江商人である。

近江商人の「三方良し」という、「売り手と買い手がともに満足し、社会貢献もできるのがよい商売である」というこの言葉は、商売の基本であり、当社の企業理念の中にも明記されている。

 

今後TPP条約の締結がなされれば、社会構造が大変革し、益々 経営環境の厳しさはその度合いを増していくであろう!

近代商社の原型を作った商人たちの経営哲学からヒントを得て、今一度 己の兜の緒を締め直すつもりで、本日はこれを綴った。