粋な物の買い方

永年にわたり毎年、お正月前になると正月飾りとして玄関に飾る「しめ縄」を送って来てくださる大変有り難い、少し年上の友人Yさんがいる。

今回はこのYさんの、しめ縄の購入方法が実に「粋な物の買い方」なのでご紹介したい。

 

奈良県にお住まいで販売業を営まれているYさんは、その事業の特性上たいへん多くの顧客をお持ちである。聞くところによると、Yさんは毎年お正月前になると、年間を通してある一定の金額以上購入してくれた顧客に対して、しめ縄を贈られているらしい。私は友人の一人として毎年その恩恵にあずかっている。

Yさんが、しめ縄を送る(贈る)ようになったキッカケは、10数年前に東京に仕入れに行った際に出会った浅草の神社の「酉の市」。それがキッカケだったらしい。

この酉の市の立つ日には、おかめや招福の縁起物を飾った「縁起熊手」を売る露店が何十軒も所狭しと立ち並ぶそうだ。

当時、Yさんは「よし、一つ買って帰ろう」と思い立ち、いざ露店で買うとなったら関西人魂に火が付いて当然のごとく値切った。

「おっちゃん!俺、九州の端から来てるねん!まけといてんか?」と声を掛けると、

「九州?お客さんコテコテの関西弁ですけど!?まぁいい。可笑しかったから半額にしちゃうよ!持ってけ泥棒!」と返って来た。

なに!半額!?

Yさんは値引き率に仰天した。

すると都内の同行の方から「ここでの縁起物の買い方をよくご存じなのですね」と言われて、初めて来た場所でもあり、まったく何も知らなかったので「どういう事か?」と聞き直した。

すると、支払は値切る前の定価通りの金額を差し出して、「ありがとよ!おつりはご祝儀でぇい!取っときな!」という習慣があり、それがここでの縁起を担いだ粋な物の買い方だと教わった。

この時Yさんは、この習慣が「凄くスマートでカッコイイ!」と感じ、痺れまくったそうである。

熊手を購入した御利益か!?翌年からYさんの事業は発展を続けて今日に至っている訳である。が、酉の市は関東なので地理的に遠く毎年行く訳にもいかず、そこで熊手の代わりとして正月飾りの「しめ縄」を年末の挨拶を兼ねて顧客に贈ることにしたとお聞ききした。

購入に際しては、しめ縄の業者さんに大量購入である旨を伝えて、「値切り倒す!」とのことである。しかし支払いは定価通りに、粋でいなせに買い物をするとのことであった。

私はYさんからしめ縄が毎年、年末に届く度、来年こそは浅草に行って私も粋な物の買い方を体験してみたいと思いながらも、まだ1度も行けていない。

有難いことに、また今年もYさんからしめ縄を賜った。

そのしめ縄を本社事務所の玄関に飾り、感謝の気持ちで新しい年を迎える。

 

本年もたいへんお世話になり誠に有難うございました。心より深謝申し上げ、縁起物のお話で本年最後のブログを〆させていただきます。

来る平成30年も変わりませぬご厚情の程、伏してお願い申し上げる次第であります。