自分の背丈以上のことはしない

 

「ある面、堅実すぎるのかもしれませんけども、自分の背丈以上のことはしない。大きな多額の投資をしなければいけないような事業には、できる限り参入しない。スケールは大きく計算は緻密に、というのが私の経営の信条だと思います」

 

これは尊敬する師である東建コーポレーション(株)の左右田鑑穂 代表取締役社長兼会長が先般【ナショナル・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2014】(起業家表彰制度)のファイナリストの表彰を受けられた時の受賞スピーチの一部分である。

 

さて当社は創業60周年を期に、「第二の創業」という命題のもと、新規事業である総合訪問ステーション「フラワーナース」を7月から開始した。

サービス付き高齢者住宅「フラワーホーム」の方は、11月のオープンに向けて現在建設中である。

ところで最近よく皆さまから「土地と建物でいくらぐらいの費用が掛かりましたか?」、「これだけ大きな投資をするにはすごく勇気が必要だったでしょう!?」、「一世一代の大勝負に打って出ましたね!?」等のご質問やご感想をよく受けるようになった。

今回はこれらのご質問にお答えする形でブログを進めたいと思う。

 

まず「一世一代の大勝負」・・・とは、少しも思っていない。

師のスピーチにもあるように、新規事業が上手く行かなかった場合に、会社が傾くような自分の背丈を超える規模の事業はしてはいけないと心得ている。

どう転んでも屋台骨が揺るがない範囲内の経営に納めなければ、お客様や社員、スタッフ、当社に関連する人々への責任が果たせない。

博打打ちは「どのようにして勝つか」としか考えないが、経営者はそれに加え、ウンザリするぐらい負けた場合のことも考えて、その勝負がいくら魅力的であっても企業生命を奪ってしまう可能性のある勝負ならば、してはいけない。「大きくなる」ことより「続けること」の方が大切であると私は考えている。

 

次に投資したことへの勇気であるが、これについては、私にとって全く勇気では無く、むしろ不安からである。

内外の景気動向や市場競合状況で厳しい経営環境になった時のことを考えると、会社の柱となる事業を増やしたいと考えるのは当然で、何もしない事の方が私にとっては不安なのである。

単一事業に特化して専門性を高めながら事業展開をして行く道もあるが、どの業界にも必ず「回復、拡大、後退、悪化」の景気のサイクルがあるので、一つの分野の事業収益の低下をその他の事業が支えることのできる多角経営の方が、不安症の私はより安心できる。

また新規事業であるサ高住の方の視点から考えると、既存事業の収益があるぶん軌道に乗せるまでの期間も余裕を持って構えることが出来るし、想定外の事態にも広い度量を持って対応することが出来る。また建築基準法で定められている基準以上の高層マンション並の耐火性能を備えたり、ストレッチャーに対応できる大型エレベーターを設置するなど、お金をかけるところにはシッカリかけて、ご利用者様の安全面や満足度に努めることが出来る。

 

この新規事業が、低迷してしまった既存事業の打開策としてのものや、自分の背丈を越えた事業であったならば、今ごろ私は不安だったかもしれない。

しかしそうではなく、より一層堅実に経営し、私の信念である三方良しを体現化して、「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」で当社に関連する全ての人々の幸せを追求して行くためである。

8年来の計画が実を結び、いよいよ11月からはサ高住が本格スタートする。

身の引き締まる思いでありながらも、いま私は新たな船出を前に希望に燃えている。