「牛のよだれ」と「やってみなはれ」

先般、旧知の間柄の元銀行マンの方のご訪問があった。

その方は地元の某銀行を、支店長職を最後に5年前に定年退職され、その後に嘱託勤務で本店管理部に3年間、奉職された方である。

来意は、「40年超に渡りお世話になり育ててくれた地元社会に何らかの形で社会貢献できればという思いから、在職当時、御縁の深かった方々の考えや生きざまや経営方針等をレポートか人物伝の形として残し、後輩行員や新しく事業を始める若い人たちに贈りたい。そのため昨年より取材活動を行っている。」

とのことだった。

私が、そのような大儀のお役に立てるかどうかはさておき、わざわざ訪ねて来て下ったことに感謝して、私の想いを少しお話させて頂いた。

 

まず前置きとして私の座右の銘は「諦めず気が遠くなるまで繰り返す」であり、みんなから「仕事の仕方も、性格も、嫌になるくらいしつこい」と、よくご批判を受けることからご説明した。

とくに経営幹部にとっては、細事に渡り「かなり口煩くしつこい社長」だと思う。笑。

次に「現状維持は退歩」と考えるが故に、成長意欲を持って常に新しいことを求め続けていること、しかしそれは身の丈を超えないように心掛けていること、変化変革はスピードを持って取り組むようにしていることなどをご説明した。

するとその方は

商売人の知恵の代表である2つの言葉<商売は牛のよだれ><やってみなはれ>を引き合いに出して、私を評価してくださった。

  • <商売は牛のよだれ> 商売は牛のよだれが切れ目なく長く垂れるように、気長く努力せよということ。
  • <やってみなはれ> サントリー創業者鳥井信治郎の言葉で開拓者精神を示したもの

 

しかしその方が帰られると、私の気分は次第に塞ぎ始めた。

というのは、自分の日頃の考えや行動であっても、それを言葉にして外に出した途端、説教臭い話になったり、実寸大以上の殊勝なものになったりして、自分で口にした言葉であるのに、自分に見合っていないような居心地の悪さを感じたのである。

居心地の悪さが心につむじ風を起こし、それが台風になり、最後はもう自省の嵐である。

私は口癖のように「たえず見直し!」を言い続けているが、果たして、それがどの程度実行出来ているのか?

ユニクロなどは予算達成・経営目標達成のために、週に一度のペースで決算して、その新鮮な数字が示す現状を読み取って、迅速に計画の見直しを行うらしい。

それに比べて我が社は、どうだ?

 

あれこれ殊勝なことを言い、東奔西走したところで、決算期毎に良い数字を残せなければ、経営者としての存在価値は無いぞ!

と、もう一人の自分が私を責めるのである。