少しでも決算書を良く見せたい、というのは、どの経営者にとっても本音であろう。
経営者としての見栄やプライドもあるし、金融機関からの資金調達を有利に進めたいという気持ちもあるし、取引先への信用力を強化したいという思いもあるだろう。
それらに加え、大企業であれば、株主総会対策もあり、経常収支と業績アピール度も計算に入れながら自社の株価の動向を鑑み、決算発表に対処していかなければならないという理由がある。
ところで長期的な業績の向上と永続的な繁栄を追求するためには、「将来を見据えた投資」が必要不可欠である。具体的には設備投資や、研究開発への投資、人材育成への投資だ。
しかし「将来への投資」は「今、無くては困る!」というものではないので、そのぶん容易に削りやすい。特に中小企業では経営者の一存で物事が決定しやすいので、黒字の額が前年度より減少した場合や赤字に転びそうな場合には、上記への投資を削減して、良い決算書を作ろうと思えば、たやすく出来る。
しかしそれで短期的に利益が出たとしても、あくまでも只の一時凌ぎであり、単なる延命措置に過ぎないのである。よしんば一時的に延命できたとしても、この施策を一時的であるにせよ取ってしまうと今後の成長を阻害することになり、また長期的展望による投資が行われ無かった期間の発生から起因する取り返しのつかないさまざま弊害を呼び込むことになる。
その上、正常な状態に会社を戻すには、その期間の数倍の期間を必要とすることになるであろう。
現在、収穫が出来ているし、収穫するのに手がいっぱいで、種植えまでする余裕は無いからと言ってそれを怠れば、数年後、十数年後には、収穫するものが何もないという状態に陥ってしまう!
経営者にとって本当に恐ろしいことは、赤字に転じることではなく、将来の展望が無くなることである。
年月が経過すれば、当たり前だが設備は老朽化し、今の技術は時代遅れのものとなり、社員たちは高齢化する。
しかしその当たり前の事を今現在、血管が凍る思いで切実に実感するのは難しい。
だから将来への投資は後回しにしてしまい易い。
しかし、「将来を見据えた投資」を永続的に行って行かなければ、企業の未来はないと思うのである。