端境期に赤字を出さない社員数

当社の社員数(パート・アルバイト含む)は「端境期に赤字を出さない人数」が基本である。

言い換えれば「一番暇なときに、ちょうどよい人数」ということになる。

という事は、繁忙期には必ず人手が足りなくなるのだが、そこは残業で乗り切る。それでも足りなければ、派遣社員や短期アルバイトを入れて乗り切るという経営方針で長年、社業を営んでいる。

これは中小企業の製造業の経営としては基本中の基本であるが、たぶん「残業が多くて嫌だなー!」と思っている社員はいるだろう。

社員にしてみれば、一年中では無いにしろ、たとえ繁忙期の3か月間でも休みが通常より少ないのは苦しい限りであろう。

しかしである。

繁忙期(1-3期)にちょうどよい人数の社員を雇うとなると、端境期(4-6期)には人員が余るうえ、人件費が経営を圧迫することになる。

当社の場合、たとえば端境期に1か月の赤字期間を出すと、平均実績で試算して、最低でも取り戻すのに約3か月の黒字の期間を必要とする。もし端境期の3か月赤字期間を出してしまうと、9か月の黒字期間を必要とするが1年は12か月(黒字9か月+赤字3か月)しかないので、その年の決算はイーブンか赤字に転落してしまう。

もし、はからずも赤字になってしまうと融資格付けが低下し、たちどころに色々な面で企業運営がスムーズに行かなくなる。

たとえば運転資金の調達が厳しくなると、会社を維持するには支出を抑えねばならず、そうなると経費の半分以上を占める人件費の削減が必要不可欠になり、まずはボーナスカット、それでも苦しい場合は、給与の削減を行わざるを得ない。それでも経営困難な場合は、社員のリストラを行わざるを得なくなる。それを数年に渡り重ねてしまえば自転車操業に陥り、最悪の場合「倒産」の2文字も視野に入って来るようになる。

 

当社は「一番暇なときに、ちょうどよい人数」で運営しているために、社員の皆さんには常々忙しい思いをお願いすることになっているので、「もっと社員数を増やして欲しい」と不満に思う時もあるだろう。

しかし事業というものは一年のうちでも繁忙期もあれば端境期もあり、もっと長い周期で考えれば、好調な時期もあれば必ず低迷する時期も来る。

「一番暇なときに、ちょうど良い人数」で運営を行っていれば、低迷な時期が予想外に長く続いたとしても、それで通常運転なので給与の削減やリストラを行わずに済む。

赤字を出さないようにするためには、やはり余剰人員を抱えないことなのである。

 

当たり前のことであるが、残業時間は、もちろん労働基準法内で行っている。

申し訳ないが、管理職の社員たちは法定労働時間の適用除外者であるため、繁忙期には骨を折ってもらっているが、サービス残業は決してさせないので、「繁忙期は自分の蓄えを増やす期間」と考えて、たくさん残業代を稼いでほしいと思っている。

 

では社員数を増やすタイミングであるが、忙しい時期が長く続くと、このままずっと繁忙期が続くのではないかと錯覚して社員数を増やしたくなるものだが、社員数は「現状」よりも「先を見据えて」決めるべきだと思っている。

現在好調であっても、それがいつまでも続くとは限らない。現状が好調で忙しいからという理由だけで、安易に社員数を増やしてしまうと、業績が落ちたら余剰人員が発生し、簡単に赤字に転じてしまう。

地デジ移行時の家電メーカーが良い例だ。

社員数を増やす決断をするには、自社だけではなく業界や景気の動向、国際競争なども含め、長期的な視点で考えなければならない。

仕事は人生を左右するほど大きなウエイトを占めるものであるから、簡単に雇って、簡単に切り捨てるわけにはいかない。

 

当社の経営方針は、「社員数は端境期に赤字を出さない人数で、そして繁忙期は残業で乗り切れる会社に成ること。」である。

そのため残業が多く、社員の皆には骨を折らせているが、しかしそれは、当社の企業理念である「すべての社員が物心両面で豊かな生活を送り、自分の将来に安心感を持てるようにする」を実現するためなのである。