リスク分散について

当社の主力商品を大まかに分類すると、寝装寝具類(繊維)と環境土木産業資材(土木)がある。

建築関係のお得意さまからは「なぜ土木資材の会社が、官公庁向け災害用毛布を売っているのですか?」とよく聞かれ、繊維関係のお得意さまからは「なぜ繊維の会社が土木資材も売っているのですか?」とよく聞かれる。

 

これには訳があって、父の会社である繊維関係の会社と、私が立ち上げた会社である不動産(当時)&土木資材の会社、これらの会社を合併させた結果なのである。
父が高齢になった為、私が父の会社の事業も引き継ぐことになったのだが、その当時の繊維業界は需要と供給のバランスが崩れておりマイナス成長の時期であった。
そのため繊維事業の会社との合併は、不採算部門を抱えることと同じであった。

しかし不動産(当時)&土木資材の事業は黒字だったため、繊維事業を回復させる為の新たな設備投資をする事が出来た。

その一つを例に出すと、真空パック包装機を導入した。

それにより災害用などの長期備蓄出来る毛布を販売することが可能になり、繊維部門も息を吹き返し始めた。
そのうち「クリーニング事業を譲渡したい」という話が外部から来て、新たにクリーニング事業も始めることになった。
それを機に、私は「製造」に「サービス」の付加価値を付けることを考え、今までは販売したらそれで終わりだった毛布を、使用後に再びお預かりし、クリーニング加工したのち再真空パック処理を行い、元の状態に戻して購入者の元に返すという製品のライフサイクルに合わせた事業を開始した。
それにより業績が上がり、合併当初は不採算部門であった繊維事業が、今では土木建材部門を超え当社のメイン部門となった。

 

私は長期安定経営を目指すには各部門の見直しや開発と共に、多角経営は必要不可欠と考えている。

どの業界にも景気のサイクルはあり、良い時期と悪い時期はあるものだが、単一事業だとマイナス成長期に息切れしてしまう可能性がある。
しかし多角化経営であれば、苦しい時期にはプラス部門が会社を支えてくれるし、マイナス部門にテコ入れをし、同業他社と差別化を図る余力もある。
また1年単位で考えてみても、業界により繁忙期は異なるので、ある部門が端境期で人員が余っても、余った人員を援軍として繁忙期の部門に配置したりもできる。
しかし単一事業であれば、繁忙期に派遣を雇ったり、端境期には人件費がコストを圧迫したりするだろう。

 

ところで当社は介護付き賃貸住宅を運営する予定で現在開設準備中である。
本業とは関連のない新規事業なので驚かれることが多いが、ノウハウを充分に持った会社及び有資格者との提携業務である。
この新規事業も私の「不安」を少しでも取り除いてくれるリスクマネージメントなのである。

会社を支える柱は多い方が安心だし、リスクを分散出来る。
しかし柱を増やす為に、社運を掛けるような最大限のパワーを使うことは、してはならない。
新規事業計画は、軌道に乗るまでの期間や万が一の事も考慮して、余力を残して行うものである。

 

ちなみに当社の事業部門の変わり種で、エステテックサロンがある。
「なぜ美容と真逆とところにある社長が、エステを?」と、私の顔を見つめながら質問される事が多く、居心地が悪いのでついでに説明しておく。
エステは私の妹が独立し開業しようとしたのであるが、その際に女性一人では銀行から資金を借りられなかった為、渋々当社のリラクゼーション事業部という形にした。
赤字が続けば早々に撤退さそうと考えていたのだが、会社という形を取っている為、個人店では出来ないような思いきった戦略なども出来た結果、開業して以来一度も赤字の月は無く、予想外に会社に貢献してくれている。