減点法か、加点法か

とある機械を修理工場さんに出した。

その際、ついウッカリその機会の中に私物を入れっぱなしにしたまま引き渡してしまった。

引き渡しのすぐ直前にもその私物を使い、いつもの習慣でまた同じその機械の中にしまった。

ところが修理工場さんから戻って来た機械の中から、例の私物は消えていた。

すぐさま修理工場さんに問い合わせて、あちこちと調べて頂いたが、結局その私物は発見できないまま終わった。

 

そこでまず私が最初に思ったことは、修理の工程で邪魔になったため、修理工場の誰かが取り出して、修理を終えた時点で元に戻すのを忘れたのだろうと思った。

私物が私の手元に戻らなかった原因は、「日本社会の風潮」にあると思った。

なぜかというと、今の日本は学校や企業等において「減点法」があまりにも色々な場面で跋扈し過ぎている。

「元に戻すのを忘れた」と正直に名乗り出ることは、「その人物の評価にマイナスが付くこと」になってしまうのだろう。

 

学校や企業で減点法を導入してしまうと、他人から低い評価をされるのが怖い人や自己評価が低かったりする人等は、自信がないシチュエーションではほとんどの場合、守り一辺倒に入ってしまう。そして、何事にも消極的になってしまう傾向にある。

また自分自身が出来る事よりも、出来ないことにばかり意識が囚われてしまう。

減点法だと、たとえちゃんと出来た時であっても只の「減点なし」であって、それ以上でもそれ以下でもない。しかし、ちゃんと出来なかったときには即座に「減点」なのである。

それでは積極的にチャレンジするモチベーションも下がっていくばかりである。

そして毎日の行動が「失敗しない事」だけの為の同じことの繰り返しでマンネリ化してしまう。結果として最後には、たとえちゃんと出来ていてもプラスがないので、自分の長所や価値、ひらめき(新企画等)に気づけなくなってしまう!

 

私は、社員を評価する時、基本的には「加点法」で評価するようにしている。

冒頭で述べたようなシチュエーションの場合、小さなミスを犯したことよりも、正直に名乗り出た真面目さに意識が向く。

取返しのつく失敗ならば、長所を伸ばす施策で短所をカバーできると考えている。

加点法の一番のメリットは、「仮に何かで失敗したとしても、また別の何かで取り返せる」と考えることが出来る点である。そしてチャレンジ精神を持ち続けることが出来るということである。

 

ただし、当社の場合だと医師や看護師をはじめとして「人の健康や命に関わる業務」については、少しの失敗も許されず、正確さと慎重さが一番に求められことは言うまでもない。