2014年

2月

27日

モチベーション

ソチオリンピックが閉幕した。
4年に一度の大会に、肉体的、精神的なピークを合わせるのは、いかに難しいことだろうと改めて思った。
オリンピックと並べるのは大変失礼だが、甲子園にしろ、インターハイにしろ、全国レベルの大きな大会に出場出来るのは、大抵は3年生になってからだ。だから高校生活の3年を掛けて、その大会を目標に頑張るのだが、そこに3年間のピークを合わせるのは難しい。

しかし天理高校には、モチベーションのピークを、最大目標の全国大会当日に合わせることにおいて天才的な手腕を持つ監督が居た。

このブログに度々登場している故・加藤秀雄先生である。

ちなみに先生のことを簡単に説明しておくと、万年「怒号の鬼」なのである。
決して褒めない!試合で勝っても、勝ち方が悪いと怒鳴りつけられ「正座で長い説教」である。年がら年中、明けても暮れても叱られ続けたので、卒業して何十年も経って、こんなオヤジになってからでも、時折OB会等で先生の前に出ると、アワアワとしてしまい言葉が出なくなっていた程である。

その先生が全国大会の一ヶ月ほど前に、初めて褒めて下さった。
「おまえら!最近、筋力が増してきたようだな。練習を頑張っている成果だな。」と。
私は耳を疑って、逆に怖くなってしまった。
また翌週、「練習の度に技が切れるようになってきているぞ!」と褒めて下さった。
入学して以来これまで一度も褒められた事がないのに、2週も連続で褒められると、さすがに私達もオカシイと感じ、「試合が近いので俺らをおだてているのじゃないか?」と怪しんだ。
また翌週は、練習試合の様子を見て、「いかった!いかった!(良かったの意味)」と先生の出身地である北海道弁で何度も褒めてくださった。
普段、先生は関西弁だ。それなのに思わず北海道弁が出てしまったぐらいだから、おだてではなく本当に俺たちは、かなり良い調子に仕上がっているんじゃないだろうか?と、皆は先生の言葉を信じるようになった。
試合の一週間前になると「お前達を見ていると練習の度に強くなっているような気がするな!羨ましいぐらいだ!」とベタ褒めされ、もう皆が加藤先生の言葉に酔いしれるようになっていた。
「これまでにないぐらい今が一番強くなっている!」そう信じ込む事で、精神面も強くいられた。「鬼の加藤先生が褒めるぐらい俺たちは強くなったのだから、負けるはずがない」という自信満々な気持ちで挑んだ大会は、最高の結果を残せた。

大会翌日。
昨日までと同じように意気揚々と練習に臨んでいると、怒号が飛んで来た。次々と飛ぶ怒涛の怒号。まるで魔法が解けたかのように、先生はまた元通りの鬼監督へと戻っていた。
昨日までの褒め称えは何だったのだ!と私たちは脳天杭打ちを食らったような気分になって唖然としてしまったが、「加藤秀雄劇場」の中で最高潮に踊らされていた事に気付いて苦笑いをした。

 

その時の事を今、経営者の視点で思い返すと、トップの人間の言動は、こんなにもモチベーションと結果に影響を及ぼすのだと驚く。
経営者の言葉で、社員のモチベーションを上げることも出来れば、逆に一気に下げてしまう可能性もある。そう考えるとトップに立つ者の発言の責任は非常に大きく、身が引き締まる。

 

2014年

2月

20日

自信と自惚れは紙一重

東建コーポレーション㈱ 左右田鑑穂会長兼社長から掛けて頂いたお言葉に「自信と自惚れは紙一重だ」というものがある。
不肖ながら私は当社の代表取締役社長である。
社長という立ち位置は当然のことながら一番重い責任を背負う。法的責任、金銭的責任、社会的責任というリスクを最終的には1人で背負わなければならない。
会社が潰れても社員達には責任は及ばないが、社長はただ一人で全責任を負い、個人負債までも抱えることになる。
しかしその代わりとして、最終的な意思決定を下す大きな権限を持っている。
その権限力を履き違えて、「会社は俺の物」だと勘違いして、大きくなったような気になって、また部下の数が増えれば自分が偉くなったような錯覚に陥り、自惚れてしまう経営者や、社内のイエスマンだけを高位に優遇し、傲慢になってしまう経営者を見掛ける。
そういう私自身も、ワンマンで独裁的な部分が多々あるのは重々承知しております。
しかしイエスマンが多くなると、根拠のない自信で間違った方向に進んでしまう危険性がある。
そうならない為にも、私は皆に「NO」の意見ほど言ってもらいたいと思っている。
社員が社長に「NO」を進言するのは大変勇気がいる事であろうと思うが、会社の為を思って言ってくれた意見なら、反対意見であっても、私は本当に嬉しい。
たまに私は社員に「喧嘩しよう」と言って討論を持ちかけるぐらいなのだが、けれども、きっとまだまだ社員達には遠慮があるだろう。
当社では昨年より社員達にも株主になってもらっている。
株主になってもらう事で、自分の会社だという意識と経営への関心を高めて欲しいと思っている。

そしてもう一つ。

社員に株主になってもらう事は、ワンマンになりがちな自分自身への戒めでもある。
社員達に「部下であっても自分は株主の一人。だから会社の利益の為には、社長と相反する意見でも発言する権利がある!」と思って欲しいのだ。

 

ところで自信と自惚れの違いは「根拠」があるか無いかの違いだと思う。
例えば「企画」であれば、「事前リサーチや周到な準備と計画」という根拠が無ければ、それはいくら自信があったところで自惚れの企画であろう。
例えば「まじめに物づくりをした」だけでは、それは自己満足の自惚れた商品かもしれない。
事前に徹底した市場調査をし、さまざまなテストに合格した商品という根拠があってこそ「自信がある商品」と胸を張れるのだ。
「社長業」であれば、企画成功経験(事前リサーチを含む)、目標達成経験、日常業務、危機的状況を乗り越えた経験等、それらの積み重ねが、自信の根拠になるだろう。
しかし社長業の自信については、「企画」や「商品テスト」のように自信の根拠をペーパーにして具体的に証明出来るようなものではない。
だから自惚れを自信と勘違いして、「社長としての直感」に頼って間違った方向に進んでしまう場合もあるだろう。そんな時に社員が会社の為を思って、社長に「NO」の意見を言える職場でなければ、いつかは会社自体の破錠を招いてしまうことになるだろう。


ただやはり経営を執行していくには、自分に自信を持たなければやっていけない部分も、データーではなく直感すなわち己の知識と経験に頼って思考し判断しなければならない場面も確かにもある。
だから私は、自惚れるな!だが自信を持て!そして聞く耳を持て!と日々、自分に言い聞かせているのである。

 

2014年

2月

12日

長生きの秘訣

先般、新聞のコラム欄で聖路加国際メディカルセンター理事長 日野原重昭(ひのはら しげあき)氏の記事を見た。ご高名な方なのでご存知のかたも多いと思うが、この方は驚くことに、102歳にして現役の医療法人理事長であり、今も日本医学会発展の為に走り続けておられるのである。

その並外れたパワーにあやかりたく、ここに日野原氏の健康の秘訣を書きとめることにした。

 

まず簡単に記事を要約すると、自らを「走り続ける車輪」に例えられていた。

車輪は休まず走り続けないと止まったら倒れてしまう。休まず走り続ける条件は、健康であること。そして「前向きなビジョン」を常に持つ事だとおっしゃられていた。
日野原氏は二十歳までに腎臓炎と肺結核を患ったが、しかしこれが医師となるきっかけとなり、「病気は神からのお恵み」と断言されている。
とにもかくにも、全てにおいて前向きなのである。

更にそれ以降、病気らしい病気はもう何十年もしていない事実に触れられ、健康の秘訣については記者のインタビューに答える形で書かれていた。

ここからは日野原氏の言葉を簡単にまとめながら自分自身と対比してみた。

 

① あまり食べ過ぎず、余分なカロリーを摂取しない事。
(私:なるべく注意しているのだが食べ過ぎである。おまけにお菓子好き 笑×)
② 出来るだけ歩き、筋肉をなるべく衰えさせず血流を保つ。
(私:最近なんとか守れている。△)
③ 年に2回は精密な高度医療の検診を受ける。
(私:これはクリアーしている。(詳細)◎)
④ 30歳の時の身長と体重を維持する。
(私:身長は183㎝で維持、体重は大幅増加 詳細はマル秘 ×)
⑤ 野菜を多く食べ、蛋白質を大豆(植物性)と脂の少ない肉(動物性)から適度にとる。
(私:野菜も豆も好き。○ 肉はサーロインが好きである。×)
⑥ 歯は消化器官の入り口と考え、常に最善の状態を保ち、よく噛んで食べる。
(私:歯は問題ナシ。○ 性格がせっかちなのでよく噛まない。×)
⑦仰向けに寝ると背骨の上に内臓が乗っかる状態になり、内臓の機能が低下するので牛や馬のようにうつぶせで睡眠をとる。
(私:子供のころから熟睡時はうつぶせ寝である。○)

 

私の場合、上記項目の約半分は×か△である。
現在、私は52歳。人間ドッグの先生は、「真面目に検査に通って健康管理をすれば、あと30年は寿命を保証する。」と言ってくれている。
しかしまだまだ実現させたいビジョンや目標・夢が目白押しであり、30年では足りない。
「企業家としての宿命を私は背負っている」と常々に自負しているからには、夢を実現させてからじゃなければ、くたばれぬ!だから、せめて90歳くらいまでは生きたいと思う!

そうだ!!日野原氏の健康の秘訣を参考にして、健康を維持する為の努力目標を自分に課そう。

そして少しでも元気に長生きして、「三方良し」の精神で、ポジティブに前進して、気が遠くなるまで生きて行こう!!

 

立花 克彦 
立花 克彦 

2014年

2月

04日

賃上げ要請

安倍晋三内閣の経済政策「アベノミクス」は、タイムラグがあったものの株価を上昇に転じさせ、円相場も円安基調に向かい始めて、重苦しい停滞した景気を、それなりに回復方向へ好転させ始めたと思う。
安倍総理が言うように大胆な金融緩和と政府の各種財政投融資額のアップそして五輪招致景気等でデフレを脱却し、物価上昇、景気回復を目指すには、賃金が上昇し国民全体が景気回復を実感する事が必要不可欠だと思う。
しかし実際は景気回復を実感するどころか、物価上昇や消費税増税により負担が増え家計は苦しくなるだろう。そうなると経済は完全に失速してしまう。
そうならない為に政府は4月からの消費税率引き上げを前に、賃上げした企業の法人税軽減の拡充を決め、賃金上昇を経済団体や各種の業界団体を通じて、各方面に要請した。


その結果、当社にも商工会議所を通じて賃上げの要請があった。

 

しかしアベノミクスにより景気回復の動きが強まっていると言っても、我々中小企業や庶民にとっては、まだまだ「実感なき景気回復」と言わざるを得ないのが現状ではないか!?
国内の消費低迷、円安による原材料の輸入価格上昇や、電気料金等光熱費の上昇の影響、そのコストの上昇分を販売価格へ転嫁することの困難さ、金融動向、アジア企業の台頭など、むしろ不安要素の方が大きい。 そもそもアベノミクス自体が虚像なのか実像なのか、まだ分からない状態だ。


そこに来て賃上げ要請だ。
賃金というものは、一度上げれば業績が落ちても下げにくい、また法人税減税は一時的なものと考えると会社の負担も大きい。今後不景気になった時の為に内部留保のことも考えなければならない。
それに賃上げを行い相対的な売価に対する利益率を下げれば、純資産経常利益率や自己資本比率の評価基準ポイントが前年対比で下落するであろうし、そうなると対外的信用の評価までも経理面や会計上においては変わる可能性がある。
このように経営者の視点で考察すると、景気の先行きが見通せない現段階で賃上げに踏み切るには、それなりの覚悟がいる。

 

では一方、社員の視点から考察してみると、どうだろうか?
4月から3%消費税が増税される。という事は給料が政府により減額されるのと同じ事だ。その増税分は我々国民の社会福祉財源の充実と安定化の為に使われるのだが、そうは言っても目の前の賃金が増税分目減りすれば、気持ちも表情も暗くなるのが人ってものだろう。
日本全体が沈んでいれば「仕方ない」と割り切れるだろうが、アベノミクスの恩恵を受けた輸出企業や大手企業では、賃上げがされる予定だ。
そんな中、「当社は賃金UPナシ!」となると、社員の心に会社に対して諦念が生まれ、モチベーションは下がることになると思う。

中小企業では社員1人1人の役割や存在がとても大きいので、社員のモチベーションがそのまま会社の雰囲気となり、売り上げにも反映するだろう。
企業は「社員」があっての企業であるから、社員が元気でない会社に成長は無いと考える。
元気な中小企業であるためには、社員のモチベーションを下げない事が重要だ。
大手企業でも賃上げナシ、もしくは賞与UPに留まる企業がある中、一中小企業である我が社が積極的に賃上げを行えば、その経営者の想いを分かってくれない社員たちではないから、モチベーション維持以上の何かが結果として生まれてくると私は信じて疑わない。
今期当社は新規事業のプロジェクトも控えており、そちらへの資金投入も大きいこの時期に賃上げを行うのは正直言って楽ではないが、敢えてこんな時だからこそ、その先の将来の為に経営者と社員が一丸となって元気に進んで行きたい。

 

よって当社は平成26年4月分から、パート・アルバイトも含めた全社員の基本給を3%アップすることとする。